#13 トイレの設置された場所により、お客様のニーズも汚れも変わる

 これまで、最近のトイレがいかに複雑化しているかについて、それから清掃従事者の視点で見たトイレのデザイン、設備についてお話してきました。今回はそういったトイレが設置された場所別に、以前ご説明しきれなかったポイントを追加していきたいと思います。

 まず、空港、駅、バスターミナルなどのトイレ。こういった場所は利用者数が非常に多いので、回転をよくする必要があります。清掃作業をしながらお客様にご利用いただき、不具合などがあった時に迅速に対応するためには、細かい設備はない方がいいと思います。これには私が今、実感している例があります。 最近、羽田空港の到着ロビーに新しいスタイルのトイレができました。以前より個室が少なくなって、その分お化粧スペース、チェンジングルーム、休憩スペースができ、しかも床は一部カーペットです。ペット専用トイレまで備えてあります。 しかし利用者の多い到着ロビーで個室が少なくなった分、回転率が悪くなってしまいました。それが原因でできた列を見て、使用を諦めてしまうお客様も増えているのです。そうした様子を見るにつけ、その場所、場所でトイレを使うお客様のニーズに合わせて、トイレを作るべきだなと改めて感じています。

 また、こういったトイレは、ホコリが溜まりやすい場所にあります。そのため清掃の際は、ホコリをこまめに除去していく必要があります。一方でデザインをする方には、ホコリの溜まりにくいデザインを考えていただきたいと思います。あとは、ゴミ箱はなるべく大きいものを設置し、清掃従事者もゴミが溜まる前に頻繁に捨てるようにしましょう。  次にデパート、ショッピングセンターなど商業施設のトイレです。各階で取り扱っているものによってトイレの使い方、汚れ方が違うため、清掃の仕方も変わってきます。洋服、雑貨、本などを扱っているフロアのトイレは、全般的に汚れにくいものです。ここは雰囲気に合わせて、少しオシャレなインテリアにしてもいいと思います。

 レストラン階(飲食エリア)のトイレは使用頻度も高く、油による汚れが出てきます。従って、清掃担当者はこまめに巡回し、飛び散った水やゴミを早めに除去しましょう。 便器の外側は本来水拭きですが、便座、便器のふた、便器の外側すべてを洗面台用の洗剤を使って定期的に拭く必要があります。床も水拭きだけでなく、中性洗剤を使ってこまめに洗剤拭きしてください。清掃作業の際は消毒液を用意し、作業後の消毒を心がけます。

 食料品売り場のフロアは、お客様のトイレよりスタッフのトイレの方が汚れやすく、臭いも発生しがちです。というのも、制服や作業服の汚れをトイレに持ち込むことが多いから。そのため、汚れの種類もいろいろです。それぞれの汚れに合わせ、適正な洗剤を使って清掃しましょう。  レストラン階と食料品売り場の床は、どちらもこまめに拭くようにしてください。汚れをほかのエリアに持ち込む可能性があります。1階と地下のトイレは使用頻度が高く、故障しやすいので、不具合がないか、清掃のたびマメにチェックしておきましょう。

新津春子略歴 1970年、中国・瀋陽生まれ。日本空港テクノ株式会社社員。「環境マイスター」として羽田空港で活躍。2018年よりハウスクリーニング「思う心」を率いる。20年7月、YouTube『新津春子の優しいお掃除チャンネル』を開設。