#17 いい仕事をするため、お客様にも自分にも道具に対しても“やさしさ”を

 トイレ清掃では、当たり前のことがなかなかできていないのが現状です。消耗品の補充が遅れていたり、ゴミ箱があふれていたり、しっかり巡回ができていない現場も時折見受けられます。そういった現場には、“やさしさ”が足りていないのではないでしょうか。

 私たちは清掃をする上で、お客様に対してはもちろん、自分たちに対してもやさしくなければいけないと思います。仕事を一つ工夫するだけで無駄な動きが減って体が楽になったり、時間も短縮できたりするものです。例えば便座シートを補充する時、ついでにケースの上または中のホコリや汚れも除去する、など。芳香剤、消臭剤の上のホコリも見落としがちなので、注意してください。

 予備のトイレットペーパーのストック場所は、使うお客様の気持ちや衛生面を考えて決めましょう。トイレットペーパーが床に置かれているのを見たことがありますが、キレイに清掃してあっても、やはり気持ちのよいものではありませんでした。お客様の目につく場所に置く場合は、お客様へのやさしさを忘れず、きれいに整頓して置くこと。そして清掃の際は、トイレットペーパーをずらしながら、ペーパーの下のホコリもきちんと拭き取ってください。

 トイレの清掃作業が終わったら、必ず道具の手入れをしておきましょう。

 ゴム手袋は、最も使用頻度の高い清掃道具。私は清掃の際、ゴム手袋を必ず2セットずつ持っていくようにしています。途中で穴があいたら使えなくなるので、予備にもう1セット、ということです。それからゴム手袋をはめて作業をする時は、手袋の口の部分を2センチほど、外側に折って使うようにしています。 そうすると手を上に向けて作業しても、手袋に付いた水が腕の方へ垂れてくることがありません。外す時にもラクになります。

 使用後は洗剤で、表裏とも指の先まで丁寧に洗います。この時、トイレ以外の場所を清掃する手袋と混ぜて洗わないようにしてくださいね。手袋の中に水を入れてすすぐ際、穴があいていないかどうかも同時にチェックしておきましょう。

 洗い終わったら手袋を裏返しにし、両手の中指同士を洗濯ばさみで留め、真っすぐ吊るします。この時、手袋のはめ口がくっつかないよう、気を付けること。手袋は風通しのよい場所で、日陰干しをしてください。

 便器用と洗面台用、便器側の壁用と洗面台側の壁用というふうに、清掃する場所によってタオル、パッド類などの道具は分けて使いましょう。用途によって、あらかじめ道具を色分けしておくといいと思います。 手袋をはじめすべての道具は作業のたびに洗い、定期的に消毒もしてください。トイレの用具は、くれぐれもトイレだけで使うこと。トイレに限らず、すべてにおいて道具の手入れが、いい仕事につながります。“道具へのやさしさ”も忘れないようにしましょう。  トイレは建物の顔となる場所です。使うお客様の立場になって考えた作業を心がけてください。トイレは、私たち清掃作業員の気持ちが、一番お客様に伝わる場所だと思います。

新津春子略歴 1970年、中国・瀋陽生まれ。日本空港テクノ株式会社社員。「環境マイスター」として羽田空港で活躍。2018年よりハウスクリーニング「思う心」を率いる。20年7月、YouTube『新津春子の優しいお掃除チャンネル』を開設。